「Schwert†Requiem RPG」の世界
ここでは、本作の世界観を述べていきます。
■《崩壊の日》
本作の世界の歴史は現実世界とほぼ同じですが、 西暦1990年に《崩壊の日》と呼ばれる大災害が起きてからは、状況が一変しています。
その日、突如として開いた平行世界と現世のゲートを潜り抜けて、《眷属(アポステル)》と呼ばれる漆黒の怪物が何億体も大挙して地球に押し寄せてきました。
それだけでなく、人間が深い絶望を抱えるとその者の肉体が変異して理性を失い、《眷属》に成り果ててしまうようにもなりました。
(なお平行世界から到来した《眷属》自体も、その世界の人間が変異したものです。)
《眷属》の暴力が人間の絶望を招き、その者が《眷属》に変わる――そんな負の連鎖が続き、地上の半分は《眷属》以外の生物が住めない世界になってしまいました。
具体的には、アフリカ、オセアニア、南米全域が既に《眷属》のひしめく地獄と化しています。
一方で、日本は大規模な被害を受けておらず「現在の地球で最も安全な場所」と見做されています。その為、外国からの避難民が年々増加しています。
■《眷属(アポステル)》
人間の影のような漆黒の姿を持つ、人間大の怪物です。
容姿は個体によってある程度差があり、緑や紫などの体表を持つ者、四足歩行をする者、巨大な者なども居ますが、基本的には「化け物」と言う他ない外見をしています。
《眷属(アポステル)》は知性と理性を持たず、暴力的な本能によってのみ動きます。無差別に生命を襲いますが、特に心輝者には目がなく、彼女たちの匂いに吸い寄せられるように位置を検知し、優先的に襲い掛かる傾向にあります。
まるで心輝者のように、彼らもまた《心核》を求めているのではないかという見方がなされていますが、《眷属》は幾ら《心核》を集めても存在として強くなっていくだけで、《エーアスト》に昇華されることはありません。
「危険な存在は回避する」という動物的本能は有しているようで、強い悪意を放つ心輝者への攻撃は避ける場合があります。
また、人間だった頃の記憶は基本的に持ちませんが、どこかその頃に執着を抱いていた対象や願望に吸い寄せられるような行動パターンを見せることがあります。
たとえば心輝者に恋をした男性が《眷属》に成り果てた場合、負かした心輝者をすぐに殺害して《心核》を奪うようなことはせず、散々いたぶった上で殺害するなどといった例があります。
何にしても《眷属》は「暴力」しか干渉の方法を知らないため、良い結果が待っていることはありませんが。
大半の《眷属》の攻撃能力は「地球上のあらゆる動物より少しばかり物理的に強靭である」程度ですが、中には現象改変、すなわち「魔法」のような力を操る者も居ます。
また、生命力は非常に高く、他者に殺害されない限り死ぬことはありません。
人間から《眷属》となった者が再び人間に戻ることは無いので、一度こうなってしまえばもう、倒すしかありません。
■《心輝者(ブレイザー)》
人間が《眷属》に変化するようになった中で生まれた、「もう一つの絶望の結果」です。
人は絶望を抱えると肉体変異現象に見舞われて《眷属》となりますが、ごく一部の者だけは異形化することなく、人間の肉体と人格を保ったまま《心輝者(ブレイザー)》と呼ばれる異能者として覚醒することが出来ます。
心輝者になり得るのは6歳から40歳までの女性だけですが、なぜそうであるのか・何が素質となっているのかは誰にも分かっていません。
彼女たちは《心輝(メンタル・ブレイズ)》という力を用いて可憐な姿に変身し、その状態で居る間は「魔法」と呼ばれる異能力を使うことが出来ます。
戦闘の際に変身することから、漫画やアニメなどになぞらえて、彼女たちのことを「魔法少女」と呼ぶ者が多く居ます。
心輝者の力は年を取るほど弱まる傾向にあり、完全に力を失うと変身すら出来なくなって普通の人間に戻ります。その為、心輝者として目覚めるのは若い女性が多く、30~40歳の心輝者は「若い時に覚醒してまだ力を失っていない」という場合が多いです。
心輝者たちの活躍によって、《崩壊の日》という大規模な災厄を前にしても、何とか地上の半分程度は守り通すことが出来ました。
しかし現代の心輝者はそのような献身的な者ばかりではなく、願望成就の為に他の心輝者や一般人を平気で犠牲にする者、社会を転覆させて心輝者の為の世界を創ろうとする者、心輝者の力を利用して犯罪行為に走る者なども増えてきています。
なお心輝者は《心核》の反応を直感によって捉えることが出来るため、心輝者や《眷属》が存在するのならば、意識を集中すればその位置が何となく分かります。ただし心輝者の場合は気配を隠そうと思えば隠すことも出来るため、この直感のみで常に心輝者の有無や居場所を確かめられる訳ではありません。
心輝者の衣装は大抵、その人物の顕在的、或いは潜在的イメージに従って形成されます。
また、衣装だけでなく肉体そのものも変身に伴って変わる場合があります。多くは「髪の色が変わる」「獣耳や尻尾、翼が生える」といった程度の変化ですが、肉体が成長したり幼くなったり、全く別の人物に変わったりすることもあります。
こういったことから、変身前と変身後、どちらか一方の容姿を知っているだけでは必ずしもその人物の素性を特定することは出来ません。
無論、他に情報を出し過ぎれば素性を暴かれてしまいますが。
心輝者は素性を暴かれると《心核》を狙う同業者からの奇襲を受けるリスクが高まるため、注意しなければなりません。
■<黒のシュヴェーアト>
心輝者になる素養を持った者が絶望した際に、銀の長髪を持つその少女は現れます。
その頭上にある輪は《エーアスト》――すなわち高次元存在の証ですが、そのことを知る人間は居ません。
彼女は<黒のシュヴェーアト>と名乗り、絶望を抱えた者に《心輝》の力と、力の所有者の証である《剣痕(グレイブ)》を与えます。
そして心輝者となった者に「《眷属》との戦いの果てに願望の成就が待っていること」を説明します。
彼女の望みは「《眷属》の根絶」ですが、結局のところ報酬が無ければ大半の人間は命がけの戦いなどしないと、よく理解していました。
■並行世界構造
本作の世界は、無数の可能性世界に枝分かれしている構造を取っています。
通常、その事実は人間にとって知覚の外であり関係のないことですが、《神域到達》を果たした者は、高次元存在として全ての可能性世界を俯瞰・出入りすることが出来ます。
本作の主な舞台は「現代日本」風であるものの他の可能性世界は必ずしもそうではなく、たとえば超科学文明を築いた世界も存在しますし、逆に中世レベルの文明に留まっている世界も存在します。
それぞれの世界を支配する《エーアスト》が異なる為にこのような違いが生まれます。
また、《空間変異》と呼ばれる現象によって現在の世界が別の並行世界と繋がることがあります。
《空間変異》によってパスが繋がるのは「《眷属》によって完全に滅ぼされ、境界が曖昧になった世界」であるため、《空間変異》が発生すると《眷属》がなだれ込んできます。
通常は「PCの居る世界にゲートが開き、《眷属》が出現する」といった形となりますが、接続の度合いが強いと別世界の一部そのものがこちら側の世界に出現することがあります。
《崩壊の日》は、非常に大規模な《空間変異》です。
これらは現世の人間が変異している訳ではないので止めようがありませんが、空間の揺らぎを直感で捉えることによって事前にある程度予測することが出来ます。
■始原宇宙――Schwert†Requiem
かつてこの宇宙は並行世界構造にはなっておらず、たった一つの時間軸だけが存在していたようです。
当時はまだ「魔法少女」が存在せず、人々は《眷属》に蹂躙されるままとなっていました。
そこに最初の「魔法少女」として<黒のシュヴェーアト>が現れたのをきっかけに《心輝者》が生まれるようになりました。
しかし、そこからいかにして並行世界構造が生まれたかは不明です。
旧世界のことを知るのは<黒のシュヴェーアト>だけであり、彼女も過去を語ることはありません。
何にせよ確かなのは、彼女が嘘偽りなく《眷属》の根絶を望んでいるということだけです。
■《心核》
《心輝者》が持つ異能力の本質は、「心の輝きを具現化すること」にあります。
「心の輝き」とは、言い換えれば「絶望の底に落ちてもなお捨てられない願望」です。深い闇の中でこそ、意志の光は輝くのです。
《心輝者》は絶望と願望によって構成された心を、異能力として具象化する力を持っている訳です。このことから、《心輝者》の強さの源は「意志力」或いは「執着心」が殆ど全てです。肉体的強弱の差はほぼ意味を持ちません。
具現化された《心輝者》の心は《心核(ブレイズ・メモリー)》と呼ばれています。
なお《眷属》も姿や人格・理性の有無こそ違えど「深い絶望と強い願望によって動いている元・人間」であることには変わりないため、彼らの心は《心核》として具象化されています。
心の力=願望や執着=戦闘力が比較的弱い《眷属》は《心核》の断片である《心核片(メモリー・ピース)》としてそれを具象化しています。場合によってはそれすらも落とさないほど貧弱な個体も現れますが、それでも普通の人間にとっては脅威となります。
また《心輝者》は自らの心を具現化するだけでなく、他者の心の構成要素である感情や思考も《心核片》として具現化する力を持ちます。
《心核》と《心核片》の違いは以下のようになっています。
・《心核》:《心輝者》や、ある程度の強さを持つ《眷属》が自らの心を具現化することによって生まれたもの。所有者が死亡した時にのみ放出される。
・《心核片》:力が弱く《心核》化出来るレベルに達していない《眷属》の心が具現化されたもの。また、人の思考や感情といった「心の構成要素」、特に「"救われた"という想い」が具現化されたもの。後者の場合は対象が生存していても得られる上、感情には数的な限りがないので状況さえ整えば幾らでも得られる。《心核片》を複数束ねることで《心核》相当の力になるため、理論上は《心輝者》や《眷属》を一切殺害せずとも人助けのみを繰り返すことで願望成就に至れるが、あまり現実的ではない。
《心輝者》はその気になれば自らの内に取り込んだ《心核》や《心核片》の内容、すなわち「本来の持ち主の人格や記憶、感情」を読み取ることが出来ます。但し、その持ち主と何らかの接点がある場合に限ります。
<黒のシュヴェーアト>は《心輝者》になった者に対してこういったシステムを詳細に語ることはなく、「《眷属》を倒し、人を救済すれば願いが叶う」とだけ説明します。
こういった性質は《心輝者》たちが自ら気付き、分析し、情報として共有しているものです。
それらの情報をもとに「他の(弱い)《心輝者》を殺す」「他者をわざと《眷属》化させて殺す」といったシステムの穴を突いたような危険思想に至った《心輝者》も一定数居ますが、このような在り方を<黒のシュヴェーアト>は望んでいません。
■現在の社会
《崩壊の日》から30年が経った現在――2020年。
人々は社会に対してどこか諦めを抱きながら、目をそらすようにして「何も変わっていないように見える」日常を過ごしています。
――もっとも、《眷属》による多大な被害を受けた地域では、それすらも許されませんでしたが。
30年前は「ごく少数の心輝者が世界を守る為に戦う」といった状況でしたが、心輝者の数が増えた今、彼女たちの価値観は良くも悪くも多様になっています。
人間の生存圏と《眷属》の支配圏の境界(つまりは凄まじい激戦区)で戦う者ならともかく、そうでない者は世間の「魔法少女」のイメージに反して、英雄的で在ることが出来ない・在ろうとしない場合が多くなっています。
単に《眷属》討伐に積極性を見せないだけならまだ良いほうで、力を用いて強盗や殺人などの犯罪を犯したり、「願望成就の為に人間を精神的に追い詰めて《眷属》化させ、刈り取る」などといった行為に及ぶ心輝者も居ます。
《眷属》ではなく、弱い《心輝者》を狙って狩るような者も居ます。その中でも特に悪質なのは、変身前の正体を突き止めて、変身の隙も与えず急襲するようなやり方です。
本作の世界観では《心輝者》という存在は周知されているため正体を隠す必要はないのですが、こういったことから、人前で変身しないように細心の注意を払える者ほど生き残りやすい傾向にあります。
《心輝者》を取り巻く状況は非常に厳しく、半数ほどの《心輝者》が、10個の《心核》を集めるどころか1つ目の《心核》を得る前に《眷属》や他の《心輝者》に殺されてしまっています。
■櫻岡市
櫻岡(さくらおか)市は、本作の主な舞台となる都市です。
勿論、他のオリジナルな舞台を用意しても構いません。飽くまで舞台設定の例となります。
櫻岡市は多くの人口を抱える大都会にして、心輝者と関わりを持つ各組織が時に協力しながらもしのぎを削り合っている激戦区でもあります。
心輝協会の本部はここに存在しています。その他の組織も、支部をこの街に置いています。
そういった事情もあって、「日本で最も心輝者が多い地域」として知られています。
主に西部が住宅街や学園の多い学生街、東部がオフィス街や商店街、アミューズメント施設等の乱立する商業区画になっています。
海沿いではありませんが海に近く、電車で1時間ほど南に行けば海辺に遊びに行くことが出来ます。
北部は郊外エリアとなっており、少々のお出かけによって、ある程度豊かな自然を享受することが出来ます。
現在の日本の大都市の例に漏れず、外国からの避難民が増加したことによってかなり多国籍な様相を帯びています。