イントロダクション
このゲームの舞台となる世界は、表向きは現実世界の現代とそっくりですが、その社会の闇には、様々な"特別性"を持った人間が、自らの目的を果たす為に人知れず力を振るったり、或いは躊躇無く一般人を巻き込んだりしています。
"特別性"とは即ち、常識外の概念。具体的には"異能"や"魔術"と呼ばれる力です。
そんなこの世界には、現在、ある危機が迫っています。
世界の法則を決定付ける"設計図"である《確率の空》――人間にとって直感的な表現をするのであれば「神」の綻びが原因で、《特異》と呼ばれる"特別性"が現れ始めたのです。
《特異》は、特別性の中でも、例外的な概念です。
それは他の特別性と違い、この世界には本来存在しない筈である、世界の外側の法則です。
これらは様々な形をとって具現化し、本来の法則である《確率の空》――即ち、世界を少しずつ崩壊させていきます。
あるものは、破滅という概念を体現した《特異》である《対象》と呼ばれる存在として。
またあるものは、世界外から現れた異世界存在《特異存在》として。
そして、人が強い意志を抱いて理想を願うことで、その者に宿る異能――《特異能力》として。
プレイヤーの操作するキャラクター達は、自らの大願の為に超越を望んだのか、または危機的状況に因る咄嗟の願いだったのかはともかく、「現実の破壊」「世界の超越」を願ったことで《特異能力》を宿してしまいます。
それは《確率の空》を超えて自分の理想通りに既存概念を捻じ曲げ、究極的には死すらも殺せる、非常に強力な異能となります。
しかし、それ自体が《特異》であるため、過度に使用すれば世界を壊すことにも繋がります。
特に、生けるものにとって絶対の法則である死を殺すことは最大の禁忌であるが故に、大きく世界を歪めます。
プレイヤーキャラクター達は、自らに宿った「世界を壊して理想を叶える力」と向き合い、「大切なもの・理想」と「その他の全て」を天秤に掛けながら戦っていくことになります。
オープニング
あなたは、「自らの住んでいる世界の”外側”が存在する」などということは知る由もない普通の人間であり、普通の学生であった。
そう、突如として現れた、悪意を持つ正体不明の人間から、愛する少女を庇うまでは。
あなたに状況を理解出来るだけの情報は無い。
あなたに状況を変えられるだけの力は無い。
何故ならば、あなたは世界の法則に支配されているだけの、取るに足らない人間の一人でしかないから。
そして「敵」はそんな事情に配慮することなどなく、何処からか生み出した剣で、あなたを貫く。
ほんの少しの間は血液が流出するのを感じていたものの、直ぐに意識は深淵に飲み込まれていく。
目前に迫るのは、回避不可能の死。たった一人の少女すらも守れない、無力な生の終焉。
終わりの間際で、あなたは考えた。
このまま、《死》という、この世界において絶対の法則を受け入れ、何も知らず、何も救えず、何も変えられずに消滅するか。
それとも、常識から解放され、《死》をも退けるか。
あなたは迷わなかった。
死を目の前にしても諦めないくらいに、あなたは特別であった。
どんな状況でも自らの理想を貫く「意志」こそが、世界を変えるのだから。
――愚問だ。あいつを護ってくれない世界の法則(ルール)なんて必要ない。だから――そんな死なんて、殺してやる。
そしてあなたは、本来ならば死んでいる程に深い傷を負った身体を駆り、「敵」に立ち塞がった――数百もの見知らぬ人間の命を犠牲にして。